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GENTEMTRIPS A DAY BY DAY featuring Hiroki Hoshi a story about his season in New Zealand

GENTEMTRIPS A DAY BY DAY GENTEMTRIPS
A DAY BY DAY
featuring Hiroki Hoshi
a story about his season in New Zealand
featuring Hiroki Hoshi
a story about his season
in New Zealand

昨シーズンからGENTEMSTICKに加入した星 宏樹(ほし ひろき)は、今春唐突にニュージーランドへ旅立っていった。ワーキングホリデー制度を活用し、暮らすように旅をするというプランを私たちが耳にしたのは出発数日前。その報せには驚きよりも、むしろ喜ばしさが上回った。なぜなら、GENTEMSTICKにとって旅は欠かせないものであり、私たちはこれまで何度も彼と似たような行動をとってきたからだ。聞けば、新潟県魚沼市で生まれ育ち、8歳からスノーボードを始めた早熟な滑り手ながら、1年を通して雪と触れ合う生活を送ったことはないのだという。30歳を目前にして味わう初めての経験。その贅沢な時間を、GENTEMSTICKライダーの藤田一茂が同行し、切り取りってきた。

日本のシーズンが終わっても、滑りたい気持ちは収まらなかった。悶々とする日々を過ごす中で頭に浮かんだのが、南半球にあるニュージーランド。訪れたことのない国だが、クラブフィールドは映像で見たことがあり、その雰囲気に惹かれていた。しかもワーキングホリデーを使えば生活しながら滑ることができる。


「それって最高じゃないか!」


もう行く以外の選択肢しか考えられなかった。旅の目的は「滑り続けることで、自分はどう変わるのか」を知ることだ。1年を通してスノーボードし続けることで、どのような変化が自分の中に起きるのかを確かめたい。そんな気持ちが背中を押した。


拠点はクライストチャーチ。自然と都市機能のバランスが自分にとってちょうど良い南島最大の都市だ。山や海の大自然へは少し車を走らせればアクセスでき、街は十分に便利で、スケートパークも多くある。キッチンハンドの仕事もなんとか見つけられ、週4日は勤務先の日本食レストランで仕込みやラーメン作りなどをし、仕事が終わればスケートボード。残りの3日は山へ。そんな生活リズムが、想像いていた以上に心地いい。

以前から気になっていたクラブフィールドは、コミュニティで運営される非営利のゲレンデだ。多くの滑走愛好家がクラブメンバーとなりファミリーのような関係を築いているから、他では感じられない温かな雰囲気がリゾートを包み、とても心地良く滑ることができる。フィールドの造りも牧歌的で、岩山にかかっているのはロープトゥのみ。そこをナッツクラッカーという腰ベルトにつないだ金属製のクリップを使い、ロープを挟み込みながら斜面をのぼっていく。それはクラブフィールドを象徴するリフトで、フィールドの伝統を感じられる存在だ。


そして驚き、また嬉しくなったのは、このようなフィールドが10ヶ所ほどもあるということ。そこでクラブフィールドを中心に13のゲレンデを滑走できるChill Season Passを買い、いろいろな場所で滑ることにした。

7月4日、いよいよニュージーランドでの僕のシーズンが始まった。初滑りはクライストチャーチから近く、1時間半ほどのドライブで着くポーターズというスキー場。その頃の僕はまだクルマを手にしていなかったこともあり、現地に20年住む日本人のヒジリさんに連れていってもらった。そしてヒジリさんを筆頭に、出会った誰もがニュージーランド初滞在の僕に優しく接してくれた。それはもう本当に感謝の日々で、無事にクルマを入手できたのも地元の人のサポートがあったからだった。


そうしてクルマを手に入れたあとは、休みをフルに使って興味のある山へ走らせた。最初の頃は、滞在するエリアの積雪が少ないこともあり、3〜4時間かかるテカポ方面へ。マウント・ドブソンやフォックス・ピークなど、雪が降っている場所へ移動しながら良いコンディションを狙えるのはChill Season Passの利点。なかでも週末のみオープンという変わった営業スタイルのフォックス・ピークでパウダーを滑れたのは本当にラッキーだった。

しばらくすると、今度は家から近いエリアにあるマウント・オリンパスへ行くようになった。同エリアで最もハードコアなフィールドで、山までのドライブ自体がアドベンチャーだといっていい。なにせ長いオフロードを走った先には崖を進む道があらわれ、路面には尖った石が転がり、パンクのリスクも出てくる。おかげで常に安全運転。ちょっとした緊張感に包まれハンドルを握る状況が続いていく。


そんな冒険心を駆り立てる道のりも含め、僕はすぐにオリンパスが好きになった。ハイクアップを経て山頂に立ったときには「ここまで来たぞ」と感動したものだ。そして冒険はピークからドロップして完成する。こうした心が躍動する時間を、オリンパスでは行くたびに味わうことができた。

このオリンパスへは、初めの頃はシゲくん(藤田一茂)の友人のローカル、Reneに連れてきてもらった。アクセスの仕方や山の遊び方を教えてもらいながらも、訪れる回数が増え経験が増すたびに、Back RidgeやLittle Alaskaといったセクションがあることや、風向きと雪がつくエリアの関係性など、徐々に自分でも山が見えるようになっていった。


また、これはニュージーランドの特徴のように感じるが、山の風がとにかく強い。見上げればリッジの雪がよく飛ばされていて、その様子は空気の流れが見えると思えるほど。それほど強い風がいつものように吹いている。そのため山へ行く日は「今日はどこに雪が溜まっているのか?」と考えることから始まる。風向きや地形を読んで滑るラインを決めるのも、この環境ならではの面白さなのだ。

こうしたアルパインエリアを滑る感覚は、とても新鮮だった。フィールドに木がないため視界は広く、しかし積雪の少ない斜面には、そこかしこにゴツゴツした岩が隠れている。転べば一発でヘルメットのありがたみを思い知る状況で、滑るたびボードには“良い思い出”としたい傷が残っていく。そんなハードなフィールドで、リッジで強風にさらされながら雪を探し、岩を避けて1本の良いラインをつないでいくのだが、それがどうにも難しい。けれど、とても得難い経験をしているという実感が、心の奥深いところに刻まれていった。

同じ趣向の人が集まるところも、クラブフィールドの一つであるオリンパスの良さだ。通うほどに、誰もがカジュアルに話しかけ、笑い、つながっていく場所であることを知る。先日もオリンパスの小屋でそんな時間を過ごした。クラブメンバーやスタッフが集まり、大人たちは穏やかに会話を楽しみ、子供たちは外でポコジャンを飛び回るといった瞬間があったのだ。自分も慣れない英語で会話をしながらその場の空気に入り込む。それで十分に楽しめる。集うのが気の良い人たちばかりだから、作り出される雰囲気も心地いい。それがここの特徴であり魅力なのだろう。なんだかクラブフィールドの本質に触れられた気がして、今後のスノーボードライフに良い糧となるであろう、とても貴重なひとときを過ごせた。

やがてニュージーランドの冬は終わりを告げた。十分に充実した日々を送りながら、次の冬以降に持ち越しとなったことがある。それはゲレンデのロッジに泊まることだ。山の上に泊まれば、朝から晩まで思いきり山と向き合う時間を味わえる。夜は居合わせた人たちと話したり、静かな山の空気を感じたり。きっとそこには新しい出会いがあって、クラブフィールドのカルチャーをもっと深く知るきっかけもあるのだろう。次の機会には、オリンパスだけなく、まだ訪れていないテンプル・ベイスンやその他の場所にも足を運んで、泊まることでしか得られない体験を堪能したいと思う。


こうして1年を通して滑る生活に身を置けたことで、雪を読む力が磨かれ、滑りの幅は広がり、またクラブフィールドという好き者が集う場所で得た多くの出会いは、今後の人生の刺激になった。はたしてこの先、ニュージーランドでの経験はどのように活きてくるのだろう。これから迎える日本の冬が、そしてその先に続く雪上ライフが、今から楽しみで仕方がない。

Film & Photo by Kazushige Fujita

Text by Hiroki Hoshi

Release Date 2026.01.17