12月初旬、藤田一茂と五十嵐嶺の2人は、中国のシリコンバレーと称される巨大都市・深圳に降り立った。
急速な発展を続けるこの都市の中心に、異様な存在感を放ちながらそびえ立つのが、室内とは思えないスケールを誇るスキー場「Shenzhen Qianhai Huafa Snow World」だ。ギネス記録にも認定された世界最長の滑走距離を有する、未来都市に突如現れた“雪の山”という様相。
FISH FINDER in CHINA & HONG KONG
FISH FINDER
in CHINA & HONG KONG FISH FINDER
in CHINA & HONG KONG




2025年9月にオープンしたばかりのこの巨大施設で、香港のGENTEMSTICKディーラーでもあるIsland Wakeのスタッフとライディングセッションをおこなう。それが今回の旅の目的だった。2022年の北京冬季オリンピック以降、中国ではスノースポーツが一大ブームとなり、その熱量は、かつて日本で巻き起こった室内スキー場ブームを遥かに凌いでいる。全長440メートルに及ぶバーンは、その勢いを体現するかのような圧倒的スケールと、どこか非現実的な空気をまとっていた。


藤田と五十嵐にとって、この滑走は、11月の立山での初滑り以来、今シーズン初となる「スキー場」でのライディングでもあった。 人工雪、いわゆる“シュガースノー”が敷き詰められたフラットなバーンで、彼らが選んだのは、フィッシュテールが印象的なSpoon Fish 141とMid Fish。圧雪バーンでこそ真価を発揮するそのアウトラインは、斜面を切り裂くような美しいターンとともに、Island Wakeのスタッフたちの記憶に強く刻まれたに違いない。
セッションの合間、スタッフたちはライディングやセッティングについて次々と質問を投げかけてきた。その真剣な眼差しに応えるように、2人は言葉以上にライディングで向き合った。そこにあったのは、国境を越えて共鳴する、スノーボードへの純粋な情熱だった。


セッションを終え、ボードを脱ぎながら、藤田がふと呟く。
「こんな施設で一年中滑れるって、どんな世界なんだろうな」
現在、中国には60以上の室内スキー場が存在すると言われている。一年を通して雪の上に立てる環境は、確かに魅力的だ。だが一方で、私たち日本人にとってスノーボードは、自然の中で、限られた季節にこそ深く味わうアウトドアスポーツでもある。その一期一会をを噛み締めながら滑る環境の尊さを、改めて感じさせる含みのある言葉だった。


短くも濃密な時間を共有した、香港・Island Wakeのスタッフたちの笑顔。その表情に、僕らは確かな手応えを感じていた。 正直に言えば、日中の国際情勢が不安定ななか、中国を訪れることに不安がなかったわけではない。しかし、実際にこの地を訪れ、同じ雪の上で滑り、語り合うことで見えてきたものがある。
物事を斜めから捉え、どんな状況でも乗り越え、強く、美しく、時に泥臭くも、その瞬間に描ける最高のラインを刻む。自然や環境、そして状況すら受け入れながら滑り続けるというGENTEMSTICKの哲学が、確かにこの場所にも息づいていた。
Photo by Kazushige Fujita
Text by GENTEMSTICK
Release Date 2026.01.23